俳優座と俳優座劇場と俳優座プロデュース
- 俳優座は1944年にスタートした劇団
- 当時は三越デパートになる,三越劇場などで上演を行っていたが,時間的制限もあったので,自分たちで作ることになった。
- そのため,千田是也,東野英治郎といった俳優座の役者たちが映画に出て,お金を稼いだ。その稼ぎの約70%(!)を投入して,1954年,六本木に劇場が完成した。これが新劇人が自分で建てた劇場,俳優座劇場
- その後,1980年に9階建てのビルを作り,席数300の劇場になった。
- 俳優座劇場は,貸館事業も行っており,「俳優座劇場プロデュース」の形で,色々な劇団の役者を集めた,オールスターゲームのような形の上演も行うようになった。
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- その「俳優座劇場プロデュース」の代表作が,「十二人の怒れる男たち」。
- もともとは,アメリカのテレビドラマ&映画
- 1954年 レジナルド・ローズ原作によるアメリカのテレビ・ドラマとして放送される
- 1957年 テレビドラマの好評を受け,シドニー・ルメット監督,ヘンリー・フォンダ等の出演で映画化(タイトルは「十二人の怒れる男」)
- 映画版のヒットを受けて,舞台作品も作られるようになる。
- 1988年に額田やえ子訳,熊井宏之演出の版で初演された後,1995年からは酒井洋子訳,西川信廣演出の版で上演を続けている。
- 両版の通算上演回数は600回以上となる財産演目
- 今回のキャストは,2015年の「史上最強」と言われるメンバー
「十二人の怒れる男たち」はどんな作品?
- アメリカで起こった「父親殺し(容疑)」についての陪審員裁判を描いた作品
- 「12」というのは陪審員の数
- 当時,有罪になると死刑になった。ただし,その場合,12対0になる必要がある
- 舞台は冷房のない暑い陪審員室が中心
- 最初に陪審員による予備投票をしたところ,陪審員8号のみが「無罪」に手を上げた
- それ以外の陪審員は,「有罪」に挙手。中にはやる気がなく,早く帰りたがっている人もいる状況
- 8号が「無罪」とした理由は,「一人の人間の命がかかっている。もし間違っていたらどうする。話し合いもしないで決められないのでは」というもの
- その後,「有罪」として証拠を一つずつ確かめていく。この過程がドラマの見所
(例)「逃げるのを見た」発言については,時間を計って,物理的に可能か検証
- 段々と怪しい部分が増えてきて,再投票をしていく度に,10対2,9対3...という感じで「無罪」が増えていく...さて最後はどうなるでしょうか?
- 13人目の陪審員として,お客さんが参加しているように思える作品。九州での公演では,いつまでも反対をしている3号に対して「まだ分からないのか!」と客席から声が掛かったとのこと。
- 前回の上演(金沢市民劇場では1990年に上演されたもの)との違いは,(1)テーブルの向き,(2)前回はカットされていた部分・セットがあったこと
- テーブルは,前回は短辺が客席に向くような「タテ置き」だったが,今回は長辺が客席に向く「横置き」
- その結果,ずっとお客さんに背を,向けている陪審員が出てくる。セリフが聞こえにくくならないように,セリフを言う際に動くといった工夫をしている。
- 奥の席の陪審員をよく見えるようにするため,舞台全体に傾斜を付けている(「八百屋舞台」)。その結果,上演中ずっと斜めになっていることになるので,結構大変。
- 前回は,舞台にはテーブルしかなかったが(私も観たのですが,確かにそうだったと思います),今回は次のようなセット・小道具を使っている。
- 男子トイレ:舞台の横に紗幕を使って用意。会議そのものだけではなく,トイレでの密談も重要なので,今回はオリジナルどおり入れている。
- 時計:会議の進行と共に,動いています。結構大きいので,搬入の時は,気をつけてくださいとのこと
- 窓:窓の景色も,会議の前後で変わっている。最後は雨が上がり夕焼けに
出演者の紹介
- 1号 塩山誠司(俳優座,石川県輪島市出身) 職人になるのが嫌で輪島を離れたけれども,数年前のNHK朝ドラ「まれ」で職人役で出演ことになったそうです。
- 2号 岸槌隆至(文学座,学生時代金沢で過ごしたとのこと)数年前の「セールスマンの死」でのウェイター役も印象的でした。
- 3号 青木和宣(文化座)最後まで「有罪」にこだわる人
- 4号 瀬戸口郁(文学座)
- 5号 渡辺聡(俳優座)ナイフの名手役
- 6号 山本健翔(劇舎カナリア)
- 7号 古川龍太(フリー,新国立劇場養成所出身&金沢出身)予定があって,早く終わらないかイライラしている人の役
- 8号 原康義(文学座)
- 9号 金内喜久夫(文学座)2番目に「無罪」に同意。85歳の大ベテランです。
- 10号 柴田義之(劇団1980)どなり続ける役なので,役作りに迷っていたが...「アメリカの大統領のイメージで」行くことにしたそうです
- 11号 米山実(文化座)
- 12号 溝口敦士(テアトル・エコー)行ったり来たりする人(優柔不断?)
- 守衛 田部圭祐子(フリー)
最後に
- 高校生向けに上演した時,高校生は被告人の少年の気持ちで聞いており,熱い感想が多数寄せられたそうです。
- 金沢市は,実は,裁判員裁判に遭遇する確率が非常に低い都市ですが,皆様も,どの人に近いか考えながら観るのが面白いのではないかと思います。
- 最後に,この作品のテーマである,「民主市議」についてのコメントがあって勉強会は終了しました。「多数決は本当の民主主義ではない。少数派の尊重とと議論を尽くすことが重要。」
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