2018年9月29日土曜日

俳優座プロデュース「十二人の怒れる男たち」を十倍楽しむために

金沢市民劇場10月例会「十二人の怒れる男たち」の上演が近づいて来ました。この作品をより楽しむことができるよう,8月21日に事前学習会が行われました。既に1ヶ月以上前になりましたが,大変面白い内容でしたので,改めてご紹介しましょう。講師は,俳優座劇場の制作担当,箱田雅幸さんでした。


俳優座と俳優座劇場と俳優座プロデュース
  • 俳優座は1944年にスタートした劇団
  • 当時は三越デパートになる,三越劇場などで上演を行っていたが,時間的制限もあったので,自分たちで作ることになった。
  • そのため,千田是也,東野英治郎といった俳優座の役者たちが映画に出て,お金を稼いだ。その稼ぎの約70%(!)を投入して,1954年,六本木に劇場が完成した。これが新劇人が自分で建てた劇場,俳優座劇場
  • その後,1980年に9階建てのビルを作り,席数300の劇場になった。
  • 俳優座劇場は,貸館事業も行っており,「俳優座劇場プロデュース」の形で,色々な劇団の役者を集めた,オールスターゲームのような形の上演も行うようになった。
旧制高校の復元教室で「勉強」会
俳優座劇場プロデュース「十二人の怒れる男たち」
  • その「俳優座劇場プロデュース」の代表作が,「十二人の怒れる男たち」。
  • もともとは,アメリカのテレビドラマ&映画
  • 1954年 レジナルド・ローズ原作によるアメリカのテレビ・ドラマとして放送される
  • 1957年 テレビドラマの好評を受け,シドニー・ルメット監督,ヘンリー・フォンダ等の出演で映画化(タイトルは「十二人の怒れる男」)
  • 映画版のヒットを受けて,舞台作品も作られるようになる。
  • 1988年に額田やえ子訳,熊井宏之演出の版で初演された後,1995年からは酒井洋子訳,西川信廣演出の版で上演を続けている。
  • 両版の通算上演回数は600回以上となる財産演目
  • 今回のキャストは,2015年の「史上最強」と言われるメンバー

「十二人の怒れる男たち」はどんな作品?
  • アメリカで起こった「父親殺し(容疑)」についての陪審員裁判を描いた作品
  • 「12」というのは陪審員の数
  • 当時,有罪になると死刑になった。ただし,その場合,12対0になる必要がある
  • 舞台は冷房のない暑い陪審員室が中心
  • 最初に陪審員による予備投票をしたところ,陪審員8号のみが「無罪」に手を上げた
  • それ以外の陪審員は,「有罪」に挙手。中にはやる気がなく,早く帰りたがっている人もいる状況
  • 8号が「無罪」とした理由は,「一人の人間の命がかかっている。もし間違っていたらどうする。話し合いもしないで決められないのでは」というもの
  • その後,「有罪」として証拠を一つずつ確かめていく。この過程がドラマの見所
(例)身長差があるのに「飛び出しナイフ」の使い方が変?
   (例)「逃げるのを見た」発言については,時間を計って,物理的に可能か検証
  • 段々と怪しい部分が増えてきて,再投票をしていく度に,10対2,9対3...という感じで「無罪」が増えていく...さて最後はどうなるでしょうか?
  • 13人目の陪審員として,お客さんが参加しているように思える作品。九州での公演では,いつまでも反対をしている3号に対して「まだ分からないのか!」と客席から声が掛かったとのこと。
前回上演との違い
  • 前回の上演(金沢市民劇場では1990年に上演されたもの)との違いは,(1)テーブルの向き,(2)前回はカットされていた部分・セットがあったこと
  • テーブルは,前回は短辺が客席に向くような「タテ置き」だったが,今回は長辺が客席に向く「横置き」
  • その結果,ずっとお客さんに背を,向けている陪審員が出てくる。セリフが聞こえにくくならないように,セリフを言う際に動くといった工夫をしている。
  • 奥の席の陪審員をよく見えるようにするため,舞台全体に傾斜を付けている(「八百屋舞台」)。その結果,上演中ずっと斜めになっていることになるので,結構大変。
  • 前回は,舞台にはテーブルしかなかったが(私も観たのですが,確かにそうだったと思います),今回は次のようなセット・小道具を使っている。
  • 男子トイレ:舞台の横に紗幕を使って用意。会議そのものだけではなく,トイレでの密談も重要なので,今回はオリジナルどおり入れている。
  • 時計:会議の進行と共に,動いています。結構大きいので,搬入の時は,気をつけてくださいとのこと
  • 窓:窓の景色も,会議の前後で変わっている。最後は雨が上がり夕焼けに

出演者の紹介
  • 1号 塩山誠司(俳優座,石川県輪島市出身) 職人になるのが嫌で輪島を離れたけれども,数年前のNHK朝ドラ「まれ」で職人役で出演ことになったそうです。
  • 2号 岸槌隆至(文学座,学生時代金沢で過ごしたとのこと)数年前の「セールスマンの死」でのウェイター役も印象的でした。
  • 3号 青木和宣(文化座)最後まで「有罪」にこだわる人
  • 4号 瀬戸口郁(文学座)
  • 5号 渡辺聡(俳優座)ナイフの名手役
  • 6号 山本健翔(劇舎カナリア)
  • 7号 古川龍太(フリー,新国立劇場養成所出身&金沢出身)予定があって,早く終わらないかイライラしている人の役
  • 8号 原康義(文学座)
  • 9号 金内喜久夫(文学座)2番目に「無罪」に同意。85歳の大ベテランです。
  • 10号 柴田義之(劇団1980)どなり続ける役なので,役作りに迷っていたが...「アメリカの大統領のイメージで」行くことにしたそうです
  • 11号 米山実(文化座)
  • 12号 溝口敦士(テアトル・エコー)行ったり来たりする人(優柔不断?)
  • 守衛 田部圭祐子(フリー)
最後に
  • 高校生向けに上演した時,高校生は被告人の少年の気持ちで聞いており,熱い感想が多数寄せられたそうです。
  • 金沢市は,実は,裁判員裁判に遭遇する確率が非常に低い都市ですが,皆様も,どの人に近いか考えながら観るのが面白いのではないかと思います。
  • 最後に,この作品のテーマである,「民主市議」についてのコメントがあって勉強会は終了しました。「多数決は本当の民主主義ではない。少数派の尊重とと議論を尽くすことが重要。」
この日の会場は旧第四高等学校の校舎だった建物

2018年9月8日土曜日

9月7日 #十二人の怒れる男たち 運営サークルに参加。金沢市民劇場50年の歴史を振り返るような話題に

昨晩は10月例会「十二人の怒れる男たち」の運営サークル会があったので出席してきました。まずは,会員募集用のチラシセットを封筒に袋詰め。個人的には,あれこれ考えるより,こういう作業をしている方が好きです。

なぜか毎回,ラスクとコーヒーをいただいています。自己紹介をした後,「会員お誘い」の状況について情報交換。

段々と「これからの会員拡大方針」みたいな大きな話になってきました。次のような色々なアイデアが出ていました。

  • 仕事に余裕が出始める,60歳の人が狙い目では。特に趣味のない男性で,「家に居られると煙たがられる人」がちょうど良いのでは。
  • 高齢者会員に孫を誘ってもらうのはどうか?
  • 大学生は舞台芸術には関心はあるが,新劇については反応が薄い。2.5次元の世界に熱中している人が多いが,新劇についても,こういったビジネスモデルを参考にすべきかも。
  • かつては有名俳優が出演することで,会員を誘うことが多かったが,最近は演劇そのものの魅力を伝えていかないと誘えないのでは(前例会の賀来千香子さん出演の例会は最近では例外的)
  • 来年のラインナップは見やすい喜劇中心なので,誘いやすいと思う。
  • バブル時代は,金沢市民劇場のポスターを市内各地で見かけたが,最近はポスターを掲示しにくくなった。やはり口コミが重要では。
その後,金沢市民劇場で上演されてきた全作品名の書かれたA3資料が登場。今回集まったメンバーは30年以上入っている人が3人いたので,「かつては特別例会というのがあり,色々な劇団を呼んでいた」「この作品はみた」「あの作品はこうだった」というような話がはずみました。

最後に10月例会作品に出演する,全メンバーからの運営サークル宛の手書きメッセージ。よくご覧になりたい方は,来週の「シール発行」の際に窓口でじっくりお読みください。


2018年9月1日土曜日

9月1日「十二人の怒れる男たち」運営サークル会報告

本日9月1日,大雨洪水警報が解除された夕方から,10月例会「十二人の怒れる男たち」第5回運営サークル会が行われたので,出席してきました。

来週からのシール発行作業を和気あいあいと行った後(こういう作業は,みんなでやると楽しいものですね),自己紹介を行い,「例会に向けて,新規入会者数の勧誘を各サークルでひとがんばりしましょう」といったことを確認しました。

情報交換の中では,中部北陸ブロックの中では,「岐阜」と「となみ」にものすごく活気があるということが紹介されました。事務局の江口さんのお話によると,「運営サークルみんなががんばる」「あきらめない」というのがポイントのようです。年1回の運営サークルを担当する時には,がんばりましょう,ということですね。

本日の会を通じて,金沢市民劇場のような演劇鑑賞団体でグループを作って演劇を鑑賞することには次のようなメリットがあると改めて思いました。

  1. 共通の演劇について知人と感想を述べあうきっかけになる。
  2. 色々なタイプの演劇を見続けるきっかけになる。
  3. 作品の上映や劇団・俳優を直接的に支えることができる。

特に「3」は演劇鑑賞団体ならではのメリットです。演劇の大道具・小道具の搬出・搬入,会場での受付・アナウンス,花束の贈呈...演劇をお客さんとして鑑賞するだけではなく,年に1回は作り手側・送り手側の一員となることができます。近年,ボランティア活動を通じて,社会的な活動に参加してみたいという人が増えていますが,演劇鑑賞団体の活動にも似たところがあるかもしれません。劇団や俳優を直接的に支えることで(会員数を増やすことがいちばんの支援),全国各地で演劇を日常的に鑑賞することのできる環境を作ることに貢献できると思います。

こういった活動に参加することは,お金では買うことのできないものです。江口さんは「周回遅れのトップランナーになっている」とおっしゃられていましたが,おそらく,自分たちで劇団や俳優を支えつつ,演劇を鑑賞したいという人は,多いのではないかと思います。

また,日ごろからの顔なじみと一緒に演劇を楽しむことに加え,今回の運営サークルの会のように,初めて顔を合わせるような人たちと演劇をきっかけに話題を広げることができます。私自身,運営サークルの活動に参加することは久しぶりだったのですが,改めてそのことを感じました。

さて次回以降ですが,以下の表のような「当日分担表」などを決めていくことになりそうです。

これからも,可能な限り,運営サークル会の様子などを報告していきたいと思います。