2019年5月21日火曜日

#金沢市民劇場 例会 #青年劇場 公演「#みすてられた島」の上演も迫ってきました。会費納入時に,いただいた「このゆびとまれ」を元に,作品の見どころなどを紹介をしましょう。

金沢市民劇場例会青年劇場 公演「みすてられた島」の上演も迫ってきました。会費納入時に,いただいた「このゆびとまれ」を元に,作品の見どころなどを紹介をしましょう。


■どんな作品?
20xx年,寝耳に水の”独立”話に島は大騒ぎ!!

20XX年。とある島。戦争が終わって安堵していた矢先,突然本土から独立を言い渡される。「独立するってどんなこと?」と当惑する島長一家のもとに,島の有力者たちが次々と集まってくる。とにもかくにも憲法を,と議論が始まり,喧々諤々。長い会議のそのかげで,将来不安から島を脱出しようという人々も...。島の未来と個々の事情・愛情がからまって,はてさて,一体どうなる?

国と島と家族をめぐる近未来コメディ。気鋭の社会派劇作家・中津留章仁と青年劇場が初めてタッグを組んだ記念すべき第1作。本来人間の共同体とはどうあるべきかというテーマで作品作りがされています。

■作・演出の中津留章仁(なかつる・あきひと)さんについて
トラッシュマスターズ主宰。東日本大震災と原発事故を真正面から扱った「背水の孤島」で,2011年,第19回読売演劇大賞・選考委員特別賞,同・優秀演出家賞,第46回紀伊國屋演劇賞,第14回千田是也賞などを受賞。演劇関係者のみならず,映画・テレビ関係者からの熱い支持を集めるいま最も注目される劇作家・演出家の一人。

「中津留章仁が上演する芝居はフツーとだいぶ違う。高速道路を疾走し,カーブを曲がった途端,目の前に大海原が広がっている。そんな感じのする舞台である。それも日本が直面している問題を最新の情報を盛り込んで描いている。」(村井 健 演劇評論家)

■大島憲法について
 この作品は,敗戦直後に伊豆諸島の大島で起きたGHQによる(日本からの)行政分離の処置に対し,大島の冬眠が分離・独立に向けて,いわゆる「大島憲法」を作成した知られざる歴史的事実をもとにしています。
 1945年のポツダム宣言時,日本の施政権を本州,北海道,九州および四国に絞る方向が出されていた。翌1946年1月21日,米軍から伊豆大島の元村村長に日本から切り離される旨が伝えられた。このため村長を中心に島の独立に向け,わずか一ヶ月で憲法草案がつくられる3月上旬には草案がほぼ出来あがっていました。しかし,同3月22日,伊豆諸島を再び日本本土に復帰させる行政分離解除が発令され,大島の独立及び「大島憲法」は幻となった。
 正式名称は「大島大誓言」。1946年に伊豆大島で作られた「暫定憲法」。全23条から成っており,前文で平和主義をうたい,第1条で「大島の統治権は島民にあり」と主権在民を明記したり,有権者の5分の1の要求で,議会の解散や行政府の不信任を決する住民投票ができるなど,島民主権が意識されていました。立憲主義の精神が現れているといわれています。
 現行の日本国憲法となる「憲法改正草案」を発表したのがこの年の4月17日。現行憲法の姿が見える前に,その先を行く進取的な内容にまとめられていました。
「このゆびとまれ」には青年劇場の皆さんからの直筆メッセージも掲載されていました。

■青年劇場制作 福島明夫さんのお話を聞く会 
 4月18日(木)に「十倍楽しむために」と題して,青年劇場制作の福島明夫さんのお話を聞く会が野々市事務所で行われました。その要点です。

(1)演劇界に中津留あり

  • この作品の作・演出の中津留仁は,東日本大震災と福島第1原発事故を扱った「背水の孤島」で伽工を浴びた
  • 中津留は劇団員と一緒に被災地に何度もボランティアに行き,そこでの生々しい体験に基づいた芝居で,いくつも演劇賞を受賞。
  • 今最も注目されている劇作家・演出家の一人

(2)作品が書かれたきっかけ

  • 1990年以降の30年間は国際社会での日本の信頼が失墜した時代。30代~40代は,運動して何かを実現したという実感を持っていない。
  • 辺野古新基地建設をめぐって県知事選や県民投票で沖縄県民の民意がはっきりしているにも関わらず,政府は新基地建設工事を強行しようとしている。青年劇場ではこのような問題をコメディとして芝居を作ることにした。
  • 井上ひさしは,東北の一寒村が日本から独立する物語「吉里吉里人」やドン・ガバチョ大統領がいて島のことは島民が決める物語「ひょっこりひょうたん島」を書いた。
  • 青年劇場では,ひとつの独立した島で政治,経済,社会を描く設定で芝居作りを進めた。

(3)大島憲法

  • そんな時,東京新聞が大島憲法の原本が発見されたことを報道。
  • 当時の村長が島民を集めて憲法をつくることから村作りを始めたことが「みすてられた島」につながった。
  • 第2次世界大戦が終わった1945年当時は,世界中の人たちが平和主義,国民主権,基本的人権の尊重を願っていた。
  • 大戦後,伊豆大島が独立させられようとした時,憲法作りから村作りを始めたことがヒントになった。

(4)作品のテーマ

  • 島民の日常生活と独立させられる島の現実とのギャップをコメディ風に描いた。
  • 島の財産は人間関係である。お金でないもので人間関係が成り立ち,お互いにできることで支え合うことがこの島の一番の財産。
  • 私たちの世代は,日本の古き良き共同体の良さも欠点も知っている。40年ほど前の家父長制支配はダメ。強圧的でない自主性,自発性のある共同体をこの芝居で描きたかった。
  • 「みすてられた島」は,切り捨てられている日本の現状を想定している。「みすてられた感」が多くの人々を支配しているが,客観的には見捨てられていることが出発点であり,「見捨てられたら,見捨てよう」。そこで居直りできるかどうか,自分たちで何かを始めるという想いをこのタイトルに込めている

(5)演劇鑑賞会との類似性

  • このような共同体は演劇鑑賞会の運営サークルに通じるものがある。
  • 演劇鑑賞会の強みは個人会員制でなく,サークルを存続させて話し合う基盤を残していること。
  • 運営サークルの役割は,最初は例会当番だったが,今は当事者として例会に向き合う場となっている。自分たちが働きかけることで例会を成功させる達成感を味わうことができる。

(6)演劇鑑賞会の役割

  • 青年座の芝居に「つながりのレシピ」がある。妻が遺した一枚のレシピを通して,ホームレスや精神障害のある人などとのつながりができ,蘇生していく物語である。
  • 障害を隠さないこと,自分のことは自分で認識して公表し,みんなで共有する。共有すればまわりの人も配慮することにあんり,本人も楽になる。
  • 演劇鑑賞会にも同じような役割がある。今の時代は演劇鑑賞を通じて「ひとりぼっちの高齢者をなくそう(笑)」がキャッチコピー。芝居を観て元気になろう,出歩いてみんなと語り合おう。運営サークルに参加すると必ず必要とされるのだから。
  • みんなで和気あいあいと話し合う関係性ができたらこんなに楽しい余生(笑)はない。



「みすてられた島」はコメディ。大笑いしながら観てください。