2019年11月29日金曜日

明日は加藤健一事務所公演「パパ,I Love You!」野々市公演。チラシ等に書かれた情報をもとに,見どころなどをまとめてみました。

金沢市民劇場2019年11月例会 加藤健一事務所公演「パパ,I Love You!」。金沢公演は11月24日に既に終了していますが,明日行われる野々市公演に備えて,「チラシ」や「このゆびとまれ」等から抜き出してみました。

■ひとことで言うと
「喜劇の王様」という異名を持つレイ・クーニーの超スピード・ハイテンション・コメディ!
エリート医師の隠し子騒動で、病院は大パニック?!
2人のライバル医師が熱いバトルを繰り広げ、舞台狭しと駆け回る。

■時間・場所
クリスマスを3日後に控えた、ロンドン、セント・アンドルーズ病院の医師談話室

■物語

  • 病院のスタッフたちは、パーティの話題で持ちきりの中、世界各国から200人もの精神科医が終結する記念講演の日にスピーチをすることになっている主役のデーヴィッドだけは難しい顔で机に向かっている。
  • そんな時,同僚でいまだに独身,出世も見込めない中年医師のヒューバートが現れてくだらないおしゃべりを始める。そのうえ若手医師のマイクや婦長も出たり入ったり。デーヴィッドの頭はイライラするばかり。今日の公演には病院の理事長も出席,妻のローズマリーも夫の晴れ姿を楽しみにしている
  • プレッシャーは大きくなる一方。そこへ突如現れたのは,以前この病院で看護婦をしていたジェーン。デーヴィッドとは18年ぶりの再開。今日はある重大な発言をするためにやってきたのだった・・・。


■見どころ

  • ことばの飛躍,スピード感,そして緩急の自在さ,よくぞここまでやってくれたという満足感いっぱいの舞台
  • 大真面目に嘘をつく,嘘がほころびて,また嘘が生まれる。一度だませても次はだませない。さらにひろがっていく嘘,嘘。そのなかから真実も見えてくる...
  • レイ・クーニーの原作を小田島雄志&恒志(親子)が翻訳。原作の言葉遊びを活かし、さらに日本語の言葉遊びも加えています。2人で翻訳をすることで、ダジャレがブラシュアップ(?)されているようです。

■加藤健一さんから金沢市民劇場の運営サークルの皆さんあての手紙から

  • テーマというものは特にありません。しいてテーマを探すとすれば「人間の欲から生ずる様々な愚かしさを徹底的に笑い飛ばす」という事でしょうか。
  • 笑うという行為そのものの中に絶大な鑑賞価値がある。大きな声で笑う事によってNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の働きが大変に活性化。
  • 笑いを感動にまで昇華させてこそ,はじめてライトコメディを上演する意味があるんだと思っています。
  • ライトコメディに大切なことは,,まず,全員のアンサンブル,つまり演出力。12名の役者が一糸乱れず,寸分の狂いもなく,絶妙のタイミングで舞台狭しと動き回る事によって,はじめてライトコメディは成立する。次に大切なのは,役者たちの誠実な演技。ライトコメディだからと言って役者が面白おかしな芝居を始めたら,見ている方は白けるばかり。

2019年9月27日金曜日

本日から,劇団民藝「野の花ものがたり」例会。ギリギリになりましたが予習用の情報です

金沢市民劇場2019年9月例会 劇団民藝「野の花ものがたり」が本日から始まります。その予習を兼ねて,「チラシ」や「このゆびとまれ」等から抜き出してみました。

■作品について
  • 鳥取市に実在する小さなホスピス「野の花診療所」と,終末医療の現場から発信する心温まるエッセーやリポート,講演などで多くのファンを持つ徳永進院長をモデルとしたお話。
  • 作者と演出は,金沢市民劇場で数年前に観た「萩咲く頃に」のふたくちつよしと中島裕一郎。徳永さんの『野の花通信』という本に基づいているようです。
  • 診療所を訪れる,さまざまな病気とそれぞれの思いを抱いた入所者たちをユーモアとペーソスを交えて描いた作品
  • 徳永さん(作品中の役名は「徳丸進」)がこのホスピスを作ったのは,次のような思いによります。「内科の勤務医時代,たくさんの患者の死に立ち会ったが,ほんとうに十分な対応や支えができたのかどうか。助けて欲しいと訴える人々を誰でも受け入れ,患者の望むことは何でもしてあげる。そんな場所にしたいと願った」
  • 人の死は終着駅なのか。死は悪者なのか,あってはいけないものか...そういったことも考えさせてくれる作品。
■公演チラシに書かれた徳永進さんの言葉から
  • 医療の場(臨床)では死は日常的な現象。戦時下でない平和時の死とは言え,死のまわりには両者を隔てない悲しみがある。
  • 医者になったころからか,死を前にして身も心も凍てつき,所作も言葉も失う日本人の姿を見てきた。もう少し自由でやわらなか空気を病室に届けることはできないか,と思ってきた。
  • 死については様々な先人たちが表現してきた。詩人,音楽家,写真家,哲学者,,,。演劇も古くから死を大切な課題にしている。独特な表現方法が,死の本質を違う角度から差し出してきたのだと思う。死への案内は,同時に生きることへの案内。臨床は他から学ばねばならない。
  • この劇が,日本人の死への思いに小さな変化を生じる一作になればと思う。

■新聞の記事から(2017年1月26日 毎日新聞)
  • 演出のふたくちつよしは「先生が,生きていることの中に死は含まれているととらえているのが見えてきた。ヒーローもヒロインでもない市井の人がどう死を受け止めていくかを,ドラマチックにではなく描きたいと思った」と話す。
  • 戯曲にするに当たってヒントにした徳永医師のエピソードをコラージュし,想像を膨らませた。夫婦や親子,兄妹といった関係の中で死を迎える姿が丹念な筆致で描かれる。
  • 「もともと家族を書いてきたので,社会も家族の目を通して見ていこうという描き方が好き。生きることと死ぬことに葛藤する人間の姿を芝居にしている。日常のなんでもないことをきちんと伝えた時に,いいドラマが生まれるような気がします」

2019年7月14日日曜日

そろそろ,前進座「裏長屋騒動記」例会ですね。予習用の情報をまとめてみました

金沢市民劇場2019年7月例会 前進座「裏長屋騒動記」がもうすぐ始まります。その予習を兼ねて,「会報」や「このゆびとまれ」等から抜き出してみました。

■作品について

  • 寅さん映画の監督としておなじみの山田洋次さんの脚本による「新作歌舞伎」。
  • 内容は,古典落語の「らくだ」と「井戸の茶碗」を合体させた,前進座を念頭に置いて書かれた「長屋物もの」

◎ものがたり
紙屑屋の久六は,裏長屋の浪人 朴斎とその娘お文に懇願されて,古い仏像を買い付けます。この仏像を蔵屋敷の若侍作左衛門に売ったところ,仏像の腹の中から出てきたのは大金五十両!ところが,朴斎も作左衛門も,自分の金でないから受け取れないと言い張り,五十両を持たされた久六は,行ったり来たりで,良心の大ピンチ

一方,同じ長屋の鼻つまみ者,らくだの馬は,魚屋からまきあげたフグにあたって死んでしまいます。兄貴分の半次は,馬の弔いのためと,久六を巻き込み大家の家に乗り込んで,目を覆う大騒ぎ。そんなある日,作左衛門は藩主・綱正に呼び出され...

◎知っておくとよい情報

  • らくだ・・・役打立たずの大きい物につけたあだ名
  • 井戸の茶碗・・・茶の世界では,「一井戸,二楽,三唐津」というくらいステータスのああるもの。韓国由来の飯茶碗で,利休なども価値を置いたよう。
  • 狂言まわし・・・全体の話を進めるのは正直が取り柄の紙屑屋,久し六。
  • 歌舞伎・・・新作でも歌舞伎。赤緑黒の三色幕を使用。鳴り物は舞台下手の御簾内。太鼓・鉦などにぎにぎしいお囃子が聞こえてきます

■山田洋次監督インタビュー
◎作品に込めた思いは?
「儒教の道徳観に窮屈に縛られた侍と,お天道様が見ている,という先祖から伝わるモラルで生きる庶民。同じ人間でありながら,階級が違うと,物の考え方も感じ方も違うということをくっきりさせたいと思いました。

◎喜劇ですが死を大胆に扱いますね
「らくだ」はとてもナンセンスな物語。死骸には手を合わせるという日本人の伝統的なモラルをひっくり返す,けしからん話です。これを本当にあったことのように物語り,倒錯して異常な価値観の世界に観客を引き込まないと,芝居は面白くなりません。

◎子どもの頃から落語好きだったそうですね。人間国宝の先代柳家小さんにんも新作落語を提供しています。
人間の欠点を楽しく表現するのが落語の芸。喜劇もそうです。欠点を面白がりながら温かく表現する。観客はそれを見て大笑いし,人ごとじゃないなど身につまされる。落語があったから僕の映画,特に「寅さん」はあると思っています。

◎常に底辺の人に温かいまなざしを向けてきました。
落語は貧しさも笑いにする。「おまえ,貧乏だな」」とお互い悪口を言いながらゲラゲラ笑うっていうのかな。今は,そういうことでは笑わなくなってきている。それじゃあ,将来の憂いなく安心して暮らしていける世の中なのか。全くそうじゃない...

■前進座俳優・忠村臣弥さんによる「聞く劇場」(6月13日)の内容から
◎歌舞伎のお話

  • はじまりは400年ぐらい前の「出雲のお国」
  • 内容面では,武士の義理や斬った張ったを描く「時代物(荒事)」と庶民の生活を描く「世話物(和物)」に分けられる。
  • 最近では「ワンピース」も歌舞伎化されている。

◎前進座のお話

  • 明治生まれの河原崎長十郎や中村勘右衛門が,トップの役者だけ人気があって給料が良いという,従来の歌舞伎の世界に疑問を持ち,独立を決める。
  • 1931年に前進座を創立。小山内薫などが作った築地小劇場の前身。命名は村山知義。
  • 戦争中も班に分かれて全国巡演。いちばんひどい時は松本に疎開。
  • 戦後,映画にも出るようになり金銭面で余裕ができ,1987年に,吉祥寺に稽古場のついた劇場を作る。
  • 養成所の時は授業料をこちらが払うが,テストに受かって研修生になると給料が支払われる
  • 今年で88周年。これも全国の鑑賞団体のおかげ。

◎忠村臣弥さんのこと

  • 歌舞伎とは縁のない九州出身です。
  • 高校時代は演劇部に在籍。顧問の先生が鑑賞会の会員で,いろいろな芝居を観る機会があった。
  • 卒業後,どこか入団テストを受けようと相談したら,「文学座とか,俳優座は受からないだろう,前進座なら...」と言われ,今日に至っております。
  • いい役をもらっています。金沢市民劇場でも上演された「山椒大夫」で厨子王役でした。
  • 今回は,若侍役。意外や意外ラブロマンスが...。
運営サークルの皆様からのメッセージも掲載されていました




2019年5月21日火曜日

#金沢市民劇場 例会 #青年劇場 公演「#みすてられた島」の上演も迫ってきました。会費納入時に,いただいた「このゆびとまれ」を元に,作品の見どころなどを紹介をしましょう。

金沢市民劇場例会青年劇場 公演「みすてられた島」の上演も迫ってきました。会費納入時に,いただいた「このゆびとまれ」を元に,作品の見どころなどを紹介をしましょう。


■どんな作品?
20xx年,寝耳に水の”独立”話に島は大騒ぎ!!

20XX年。とある島。戦争が終わって安堵していた矢先,突然本土から独立を言い渡される。「独立するってどんなこと?」と当惑する島長一家のもとに,島の有力者たちが次々と集まってくる。とにもかくにも憲法を,と議論が始まり,喧々諤々。長い会議のそのかげで,将来不安から島を脱出しようという人々も...。島の未来と個々の事情・愛情がからまって,はてさて,一体どうなる?

国と島と家族をめぐる近未来コメディ。気鋭の社会派劇作家・中津留章仁と青年劇場が初めてタッグを組んだ記念すべき第1作。本来人間の共同体とはどうあるべきかというテーマで作品作りがされています。

■作・演出の中津留章仁(なかつる・あきひと)さんについて
トラッシュマスターズ主宰。東日本大震災と原発事故を真正面から扱った「背水の孤島」で,2011年,第19回読売演劇大賞・選考委員特別賞,同・優秀演出家賞,第46回紀伊國屋演劇賞,第14回千田是也賞などを受賞。演劇関係者のみならず,映画・テレビ関係者からの熱い支持を集めるいま最も注目される劇作家・演出家の一人。

「中津留章仁が上演する芝居はフツーとだいぶ違う。高速道路を疾走し,カーブを曲がった途端,目の前に大海原が広がっている。そんな感じのする舞台である。それも日本が直面している問題を最新の情報を盛り込んで描いている。」(村井 健 演劇評論家)

■大島憲法について
 この作品は,敗戦直後に伊豆諸島の大島で起きたGHQによる(日本からの)行政分離の処置に対し,大島の冬眠が分離・独立に向けて,いわゆる「大島憲法」を作成した知られざる歴史的事実をもとにしています。
 1945年のポツダム宣言時,日本の施政権を本州,北海道,九州および四国に絞る方向が出されていた。翌1946年1月21日,米軍から伊豆大島の元村村長に日本から切り離される旨が伝えられた。このため村長を中心に島の独立に向け,わずか一ヶ月で憲法草案がつくられる3月上旬には草案がほぼ出来あがっていました。しかし,同3月22日,伊豆諸島を再び日本本土に復帰させる行政分離解除が発令され,大島の独立及び「大島憲法」は幻となった。
 正式名称は「大島大誓言」。1946年に伊豆大島で作られた「暫定憲法」。全23条から成っており,前文で平和主義をうたい,第1条で「大島の統治権は島民にあり」と主権在民を明記したり,有権者の5分の1の要求で,議会の解散や行政府の不信任を決する住民投票ができるなど,島民主権が意識されていました。立憲主義の精神が現れているといわれています。
 現行の日本国憲法となる「憲法改正草案」を発表したのがこの年の4月17日。現行憲法の姿が見える前に,その先を行く進取的な内容にまとめられていました。
「このゆびとまれ」には青年劇場の皆さんからの直筆メッセージも掲載されていました。

■青年劇場制作 福島明夫さんのお話を聞く会 
 4月18日(木)に「十倍楽しむために」と題して,青年劇場制作の福島明夫さんのお話を聞く会が野々市事務所で行われました。その要点です。

(1)演劇界に中津留あり

  • この作品の作・演出の中津留仁は,東日本大震災と福島第1原発事故を扱った「背水の孤島」で伽工を浴びた
  • 中津留は劇団員と一緒に被災地に何度もボランティアに行き,そこでの生々しい体験に基づいた芝居で,いくつも演劇賞を受賞。
  • 今最も注目されている劇作家・演出家の一人

(2)作品が書かれたきっかけ

  • 1990年以降の30年間は国際社会での日本の信頼が失墜した時代。30代~40代は,運動して何かを実現したという実感を持っていない。
  • 辺野古新基地建設をめぐって県知事選や県民投票で沖縄県民の民意がはっきりしているにも関わらず,政府は新基地建設工事を強行しようとしている。青年劇場ではこのような問題をコメディとして芝居を作ることにした。
  • 井上ひさしは,東北の一寒村が日本から独立する物語「吉里吉里人」やドン・ガバチョ大統領がいて島のことは島民が決める物語「ひょっこりひょうたん島」を書いた。
  • 青年劇場では,ひとつの独立した島で政治,経済,社会を描く設定で芝居作りを進めた。

(3)大島憲法

  • そんな時,東京新聞が大島憲法の原本が発見されたことを報道。
  • 当時の村長が島民を集めて憲法をつくることから村作りを始めたことが「みすてられた島」につながった。
  • 第2次世界大戦が終わった1945年当時は,世界中の人たちが平和主義,国民主権,基本的人権の尊重を願っていた。
  • 大戦後,伊豆大島が独立させられようとした時,憲法作りから村作りを始めたことがヒントになった。

(4)作品のテーマ

  • 島民の日常生活と独立させられる島の現実とのギャップをコメディ風に描いた。
  • 島の財産は人間関係である。お金でないもので人間関係が成り立ち,お互いにできることで支え合うことがこの島の一番の財産。
  • 私たちの世代は,日本の古き良き共同体の良さも欠点も知っている。40年ほど前の家父長制支配はダメ。強圧的でない自主性,自発性のある共同体をこの芝居で描きたかった。
  • 「みすてられた島」は,切り捨てられている日本の現状を想定している。「みすてられた感」が多くの人々を支配しているが,客観的には見捨てられていることが出発点であり,「見捨てられたら,見捨てよう」。そこで居直りできるかどうか,自分たちで何かを始めるという想いをこのタイトルに込めている

(5)演劇鑑賞会との類似性

  • このような共同体は演劇鑑賞会の運営サークルに通じるものがある。
  • 演劇鑑賞会の強みは個人会員制でなく,サークルを存続させて話し合う基盤を残していること。
  • 運営サークルの役割は,最初は例会当番だったが,今は当事者として例会に向き合う場となっている。自分たちが働きかけることで例会を成功させる達成感を味わうことができる。

(6)演劇鑑賞会の役割

  • 青年座の芝居に「つながりのレシピ」がある。妻が遺した一枚のレシピを通して,ホームレスや精神障害のある人などとのつながりができ,蘇生していく物語である。
  • 障害を隠さないこと,自分のことは自分で認識して公表し,みんなで共有する。共有すればまわりの人も配慮することにあんり,本人も楽になる。
  • 演劇鑑賞会にも同じような役割がある。今の時代は演劇鑑賞を通じて「ひとりぼっちの高齢者をなくそう(笑)」がキャッチコピー。芝居を観て元気になろう,出歩いてみんなと語り合おう。運営サークルに参加すると必ず必要とされるのだから。
  • みんなで和気あいあいと話し合う関係性ができたらこんなに楽しい余生(笑)はない。



「みすてられた島」はコメディ。大笑いしながら観てください。

2019年3月6日水曜日

金沢市民劇場3~4月例会 劇団文化座「三婆」情報

金沢市民劇場3~4月例会 劇団文化座「三婆」のチケットシールの発行が始まったので,本日の夕方いただいてきました。「お誘いチラシセット」に加え,「三婆」公演に関する情報の書かれた「このゆびとまれ」をもらってきました。その内容を再構成してお知らせ
しましょう。

■どんな作品?
  • 「三婆」は,30年前に野々市例会がスタートした時の例会。野々市鑑賞会の原点とも言える作品です。
  • 老いること,生きていくこと,人と人とのつながりを笑いと涙の中で改めて考える名作。社会性とエンターテインメントを兼ね備えた人間喜劇
  • 1963年(昭和38年),金融業者の武市洪蔵が妾の駒代の家で急死。知らせを聞いて本妻の松子と浩蔵の妹タキが駆けつけた。やむなく同じ敷地内にすむことに女3人がバトルを繰り広げる。もう決して若くはない3人。どんな思惑が3人の胸中にうずまく?
三婆はそれぞれ,陰では次のようなニックネームで呼ばれています。
  • 本妻 松子(カボチャ婆): 佐々木愛
  • 妾 駒代(キツネ): 阿部敦子
  • 小姑 タキ(電気クラゲ): 有賀ひろみ
■「三婆」の歴史
  • 1973年,東宝芸術座での初演。以来繰り返し上演されてきた作品
  • 1974年,映画(三益愛子,田中絹代,小暮実千代)
  • 文化座では1977年,劇団創立35周年記念として初演。そのときのキャストは鈴木光枝,河村久子,遠藤慎子。
  • 金沢市民劇場では1989年,野々市会場で上演
  • 2016年,28年ぶりに再々演が実現
■ことば
小幡欣治(脚本担当)さん「商業劇場の舞台でこんな色気のない婆さんばかりがぞろぞろ出てきて,果たして商売になるだろうか,と正直なところ自信がなかった」 
西川信廣(文化座での演出)さん「老いを扱いながらも明るい人間喜劇として「共生」という生き方を示している。老いの先には死という未知の領域がある。しかし老いて孤独にならず老いを共に迎える人たちがいたら幸せではないらどうか」
平成元年に野々市で上演された作品を平成時代の最後の最後に上演するのも,どこか象徴的ですね。それにしても有吉佐和子さんの原作の先見性には驚かされます。